中学受験にはメリットとデメリットがある
中学受験にはメリットもありますが、一方でデメリットもあります。
中学受験で得られるものと、もしかしたら失うかもしれないもの、それぞれあらかじめ知っておいて臨んでいきたいですね。
3つの観点を用意しました。それでは、ゆるりとお楽しみください。
【①】視野が広くなる⇔狭くなる
⚫︎メリット①視野が広くなる
一つ目のメリットは「視野が広くなる」ことです。
視野が広い人の特徴* は、「好奇心旺盛で知識が豊富」「フットワークが軽い」「1つの意見や考えに固執しない」だそうです。
●視野を広げ、好奇心旺盛な子を育てる
中学受験勉強では、小学校の学習範囲を超えた内容を多く学びます。塾に通い始める前後で比較すると、格段に子どもの会話レベルが上がっていて「そんなこと知ってるんだ!」と驚くことがあります。知識は詰め込むだけでは意味がありませんが、人間はまったく知らないことは目に入らないので、「それ、知ってる!」が増えると見える世界の解像度が上がりますよね。受験勉強は子どもの社会に対する視野を広げるのに役に立っているなと思います。
*出典:「視野を広げるには?視野を日常的に広げていく方法」
●デメリット①視野が狭くなる
デメリットは逆に「視野が狭くなる」ことです。「さっき視野が広くなると言ったばかりで何を言ってるんだこの人は?」と思われたかもしれませんが、これにはちゃんと理由があります。
視野が狭くなる理由は、中学受験をすると、友だちはみんな中学受験をしている子、関わる大人は中学受験に肯定的な大人になりがちだからです。
視野を広げていくには、多様な価値観に触れることが大事ですが中学受験はその性質上、同じように塾に通い受験準備をしてきた、同じような学力の子が集中する仕組みになっています。そのため、自覚をして気を付けていないと視野が狭いまま大学生、大人になってしまう可能性があります。
●時に危険な偏差値
視野が狭くなるきっかけの一つとして「偏差値」が挙げられます。偏差値を上げることばかりに一生懸命になっていると、偏差値が高ければ正義、偏差値が低いのは悪といったような単純な考えになってしまいがちです。言うまでもなく、偏差値というのは世の中にたくさんある定規のひとつであるに過ぎません。それは誰もがわかっていることのはずなのに、受験に集中していると時に忘れそうになってしまいます。
そして受験が終わったあとも、偏差値で人を測るクセがついていたらゾッとしないですよね。悲しい偏見を持ったままにならないように偏差値の取り扱いには重々注意していきたいものです。
【②】学校選択の幅が広がる⇔狭くなる
●メリット②中学受験は「私立」の選択の幅が広い
学校選びを始めると、こんなに多くの私立が中学受験を実施しているのかと驚かれると思います。一方で、上位校の多くが高校募集をしていません。
●たとえば男子だと、東京の男子御三家、新御三家の下記の学校で高校募集をしているのは2校のみ。
開成 ⇒高校募集あり
麻布
武蔵
駒場東邦
海城
巣鴨 ⇒高校募集あり
●女子の御三家、新御三家で高校募集をしている学校はありません。共学ではなく、「女子校」で高校募集をしている学校がとても珍しい印象です。SAPIX中学部の偏差値表に出てくる女子校が数えるほどしかありません。慶應女子、お茶大附属、淑徳与野、日本女子大附、十文字、富士見丘、あとは浦和の公立高校のみになります。
桜蔭
女子学院
雙葉
豊島岡
鷗友
吉祥
●高校受験では減る「進学校」
特に私立の中でも「進学校」と呼ばれる大学付属ではない学校が高校受験では少なくなります。
男子の高校受験を見てみると、名前が挙がってくる進学校は、開成、渋幕、市川の3校。ICUは学校HP*によると約3分の1がICUへの推薦されますが他大学海外大学への進学も多いようなので半進学校ですね。
開成 ⇒進学校
慶應(義塾・志木)
早大(学院・実業)
渋幕 ⇒進学校
市川 ⇒進学校
ICU ⇒半進学校
中央大
明大明治
青山学院
長男の高校受験のときに、進学校を希望していましたが進学校のみに絞ると、選択肢がかなり絞られてしまうので、付属校も受験をしました。
首都圏女子の私立上位で進学校は渋幕、市川の2校。ICUを加えても女子のほうがさらに少ないなと思います。
渋幕 ⇒進学校
市川 ⇒進学校
慶應(女子)
早稲田(実業)
ICU ⇒半進学校
中央大
青山学院
明大明治
●デメリット②中学受験は「公立」の選択の幅は狭い
一方で、中学受験で選択をしにくのが公立の学校です。
都立県立の中高一貫校は増えてはいるもののまだまだ高倍率。入試日が同じなので併願もできません。
「もっと公立中高一貫校の門戸が広かったら、正直公立校の教育で十分だと思っている」という方もたくさんいらっしゃると思います。もう少し、選択できる学校が増えてくると良いですね。
●中高一貫校の校数と募集人数(2023年度入試より)
東京都 ・・・11校(1,735人)
神奈川 ・・・ 5校(680人)
千葉 ・・・ 3校(240人)
埼玉 ・・・ 4校(400人)
●私立公立、進学校付属校それぞれ良いところがある
当然ですが私立公立、進学校付属校それぞれに良いところがあります。どちらを選ぶのが優れているかという話ではありません。ただ、中学受験と高校受験というタイミングの違いで選択できる学校のレベルや数には違いが出てくるという点に注意してください。
【③】中学受験はコスパが良い⇔悪い
●中学受験って高い?
中学受験の進学塾3年間にかかる費用は約269万*。それだけではなく、通塾中は、オプションの教材費・交通費・文房具・カバン・お弁当代などなど通塾に絡む出費があります。また、入学してからは、入学金・私立の授業料・寄付金などがかかってきます。
*Benesse『中学受験パーフェクト・ガイド』より
ただ実は、高校受験だからといって安いわけではなく、最難関レベルの高校受験の塾は、中学受験と同じくらいの金額がかかります。
なので塾というより、一番の大きな差は私立中の学費約300万、私立高の学費約300万円です。【2】でも書きましたが中学受験では公立中の選択の幅が狭いので、どうしてもここは差が出る部分です。
ただ私立学校の授業料の負担を軽減する支援制度もあります。年収制限がありますが、たとえば東京都では「私立中学校等授業料軽減助成金事業」という事業があります。諦める前に通学を希望する学校、お住まいの自治体の支援制度をチェックしてみましょう。
私立中学校等授業料軽減助成金事業
●【参考】中学受験準備~高校までにかかる金額を比較
中学受験+私立中高+中学塾+高校塾 = 1,270万円
中学受験+私立中高+高校塾 = 1,130万円
中学受験+高校受験+私立高+高校塾 = 1,110万円
中学受験+高校受験+公立高+高校塾 = 900万円
高校受験+私立高+高校塾 = 830万円
高校受験+公立高+高校塾 = 620万円
長男は高校受験後、すぐに大学進学準備の塾に通い始めました。
次男は中学受験後、まだ塾に通っていませんが、周囲では塾で英数を取っている子もチラホラ。
いつから通うことになるのか悩ましいところです。
●【参考】それぞれの費用は下記で計算しています。
中学受験 280万円
私立中学費 300万円
中学塾(英数) 140万円
高校受験 250万円
私立高学費 300万円
公立高学費 90万円
高校塾(英数理)250万円
●教育費って安ければ安いほどいい?
ただ、教育費って安ければ安いほどいいというわけではないですよね。極端に言うと、同じ大学に入るなら、同じ会社に就職するなら、コストは安いほど良いでしょうか?そうではないですよね。(このブログをこんなところまで読んでくださっている方にそんな考えの方はいらっしゃらないと思いますが…)
前の投稿「どうして中学受験するの?」でも書きましたが、中学受験の主な学習期間の4~6年生は学びのゴールデンエイジに当たります。その時期に集中して学べる環境を用意することは今後の学びの土台を作るために、決して無駄にはならないはずです。
偏差値と同じで、大学名や就職先はただの物差しのひとつです。一人ひとりが学生時代に経験してきたこと、学んできたことみんな違うはずです。単純化してコスパが良い悪いと断じるのは、ビジネスの世界には向いているかもしれませんが、教育には向かないように思います。
安ければ安いほど良いとは思わないけど、これはやらなくても良かったな~、幼児教育でアクセルを踏みすぎちゃったな~は私もあります!笑
まとめ~中学受験をするメリット・デメリット
中学受験をするメリットとデメリットを3つの観点からまとめました。
【①】視野が広くなる ⇔ 狭くなる
知識・興味という面で視野が広くなる ⇔ 人間関係や価値観は視野が狭くなることも
【②】学校選択の幅が広くなる ⇔ 狭くなる
私立校の学校選択の幅が広くなる ⇔ 公立校の学校選択の幅は狭くなる
【③】中学受験はコスパが良い ⇔ 悪い
中学受験は学ぶのに最適なタイミング ⇔ 中学受験は費用がかかる
メリット・デメリットを中学受験を取り巻く、背景含め理解をすることで、ぜひ納得した進路選択にお役立てください。
ここまでお読みいただきありがとうございます。みなさまの大切なお子様の受験のご参考になれば幸いです。